Quantinuumによると、同社の量子コンピューターHeliosでは現在、保護された量子情報が失われる割合が、誤り訂正ラウンド100万回当たり約5件のエラーにまで低下している。
この成果は、より信頼性の高い量子コンピューティングに向けた進展を示すものだが、この数値が測定しているのはコンピューティング全体の精度ではなく、論理メモリーの性能だ。
10月19日、Quantinuumは99.9995%の論理忠実度を報告した。これは、同社の98量子ビットのトラップドイオン方式商用コンピューターHeliosで、誤り訂正アーキテクチャーにカラーコードを用いた結果だ。
同社によると、このエラー率は同社が9月に記録した数値の10分の1であり、他方式のハードウェアによる公表済みの最高記録(同社が挙げているのはGoogle Quantum AIの超伝導システム)の100分の1だという。
Quantinuumはこの成果を、2029年までに納入する計画の汎用フォールトトレラント・コンピューターApolloと結び付けている。このタイムラインは、エネルギー省(DOE)のコンペティションを含む、フォールトトレラント・マシンを目指す連邦政府プログラムが推進される中で示された。同コンペティションでは、最大2億1,500万ドルの資金が計画されている。
カラーコード実験が示したこと
Quantinuumと、同社のプレプリントに対する独立分析による主な結果は次のとおりだ。
- 指数関数的な抑制:コード距離を1段階上げるごとに、残存する論理エラーが12分の1に減少するという記録的な結果を、Quantinuumは報告している。
- 論理ゲート:コード距離5では、2量子ビットの論理ゲートで10万回当たり約7件のエラーが発生した。
- ハードウェアの限界:距離7でのゲート実験は、Heliosの量子ビット数では足りなかったため実施されなかった。
- 同じマシン、2つのコード:9月のHelixの記録と10月のカラーコードの結果は、いずれも同じHeliosハードウェア上で実行された。
この研究には参加していないSandia National LaboratoriesのQuantum Performance Lab共同ディレクター、Robin Blume-Kohout氏は、この論文について「構成要素である物理量子ビットと比べて、ほぼ100倍優れた論理量子ビットを示している」と述べた。
この区別が重要なのは、量子情報の保持と、それを使った計算の実行が異なる課題だからだ。論理メモリーのエラー率が低くても、量子コンピューターが同じ信頼性で長く複雑な計算を自動的に実行できることを意味するわけではない。
エラー低減にはより多くの量子ビットが必要
量子誤り訂正において、コード距離は、論理量子ビットが特定の物理エラーからどの程度保護されているかを表す。距離を大きくすれば保存された量子情報の信頼性を高められるが、通常はその保護を維持するために、より多くの物理量子ビットが必要になる。
以下の Quantum Computing Reportの分析では、テストしたコード距離ごとの結果を次のように示している。
| 測定項目 | 距離3 | 距離5 | 距離7 |
|---|---|---|---|
| ラウンド当たりの論理エラー | 5.5 × 10⁻⁴ | 3.8 × 10⁻⁵ | 5 × 10⁻⁶(99.9995%の忠実度) |
| 論理量子ビット1個当たりの物理量子ビット数(データ用および測定用) | 13 | 37 | 73 |
量子ビットのオーバーヘッドによって、フォールトトレラント・マシンの必要規模が決まるため、生のエラー率と同じくらい重要な問題だ。これはIBMが最近の研究でも対象とした、誤り訂正のオーバーヘッド削減に関する課題である。
eWeekが発見したこと:忠実度の背後にある量子ビット数
Quantinuumの99.9995%の忠実度記録は、フォールトトレラント量子コンピューティングにおける中心的な課題を浮き彫りにしている。信頼性を高めるには、物理量子ビットを追加する必要がある。
同社の発表では、Helixは論理量子ビット1個当たり10個の物理量子ビットを必要とする一方、カラーコード方式では最大37個としている。これとは別に、Quantum Computing Reportの分析では、見出しで示された忠実度の結果に関連する距離7のメモリー構成に73個の物理量子ビットが必要だとされている。
これらの数値は、報告された構成や比較の対象が異なるため、慎重に解釈する必要がある。公開されている説明からは、この差が測定用量子ビットを含めたかどうかだけに起因するとは判断できない。
この区別は、量子コンピューティングのアーキテクチャーを評価する際に重要になる。ベンダーを比較する組織は、報告された各性能値がどのコード距離、量子ビット資源、論理演算を表しているのかを確認すべきだ。見出しを飾る忠実度の記録だけでは、完全なフォールトトレラント・システムに必要なハードウェア要件は分からない。
同じ注意は、量子コンピューティングにおける他のマイルストーンとの比較にも当てはまる。Googleが最近発表した Willowでのマジック状態蒸留の成果は、保存された論理情報ではなく、量子計算に使うリソースの準備時に発生するエラーを測定したものだ。したがって、この2つの成果は異なる能力を測定しており、全体的な性能ベンチマークとして直接比較することはできない。
Blume-Kohout氏は、規模を拡大した場合でもオーバーヘッドは管理可能だと主張した。「このシステムを大規模化したバージョンなら、実用的なフォールトトレラント計算に必要な信頼性を、実現可能な規模、つまり100万個未満の物理量子ビットで達成できる可能性がある。これは実用的な量子コンピューティングの見通しを改善する」
ただし、この評価は依然として予測にとどまる。Heliosは距離7で低い論理メモリーエラー率を実証したものの、その結果をより大規模なシステムや、より複雑な論理演算へ拡張するには、さらなる実験的証拠が必要になる。
Quantinuumの成果は、フォールトトレラント量子コンピューティングに向けたスケール拡大の主張を裏付けるものだが、次の課題は、複雑さを増す計算の実行中にも低いエラー率を維持できることを示すことだ。距離7以上での論理ゲート実験は、2029年に予定するApolloの目標に向けた進展を測る、もう1つの重要な試験になるだろう。
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